うじゅらの映画的生態記録

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トランスアメリカ  梅田ガーデンシネマにて

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 実の親子だからとか家族だからとか血のつながりとか,そんなことには何の意味もない。たまたま親子という関係にあった人間同士が,様々な葛藤があるなかで,親が子に惜しみない愛情をそそぎ,子がその愛情に甘えながらも応えようとする,そういう過程を経てはじめて真の親子になりうるのではないのか。
 LAでひっそりと暮らすブリーは一週間後に男から女になる性転換手術を控えていた。そこへ過去に一度だけ女性と性交渉をもったときにできたと思われる彼女(ブリー)の息子トビーがNYの拘置所にいると連絡があった。無視を決め込もうとしたが,セラピストの助言により,しぶしぶNYへ向かったブリー。男娼をしながら,ドラッグも所持しているというトビーの保釈金を払い,自分は教会から派遣されたものだと息子に自己紹介する。そうして,ブリーは父親であることを隠したまま,父親と暮らすことを夢見るトビーとNYからLAへ向かう大陸横断の旅に出るのだが……。 
 ブリーは息子の存在は認めながらも,自分が『父親』であることはけして認めようとしない。ブリーの身体は男性であるが,心は女性であり,男性であった過去は葬り去りたいものでしかないからだ。トビーには父親であることを隠し通した。だが,旅を続けるなかで,ブリーとトビーはお互いの弱さを知り,それを愛しいものと受け止め,断ち難い絆を感じるようになる。ついに,トビーはその愛情をセックスという表現でブリーに求めた。トビーにとっては最も残酷な形で,ブリーは真実を告白しなければならなかった。受け入れがたい現実を目の前にしたトビーはブリーを殴り飛ばし,そして姿を消した。
 トビーの拳は哀しみに満ちていて,その拳を通して知った痛みが自分を偽り続けたブリーに,女の心を持ちながら男性として生まれてきた運命そのものを認めて生きていかなければならないという自覚と勇気を与えた。捜索を願い出た際,警察にトビーとの関係を問われ,彼女は一語一語噛み締めるように「I am his father」と答えたのである。
 ブリーはひとりLAに到着し,性転換手術を受けようとしていた。しかし,それはトビーの父親であることも消し去る手術。その手術によって,かけがえのない息子を永遠に失ってしまうのではないかという畏れを抱くブリー。そこで彼女を励ますように流れる曲『Like A Rose』"It's OK. You don't have to be afraid"優しく包み込むようなメロディーと歌詞が印象的。
 手術後,セラピストの前で「トビーが……」と言ったまま言葉が出ず,泣き崩れるブリーを私は胸が潰れるような思いで見ていた。けれど,過去も現在も含めて,ありのままの自分を肯定し,愛することを知ったブリーはしっかりと地に足をつけて人生を歩んでいく。
 ラストには,なんとも温かく飾らない父と息子の姿が描かれていた。過酷な道のりを経てやっと辿り着いた『親子』のあり方に心揺さぶられずにはいられない。

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